色鮮やかな「のれん」が、街を盛り上げ人を繋ぐ。市川・真間で開催の「KUGURU」展

KUGURU展の概要
千葉県市川市・真間の商店街では、アーティストが手がけた90点の「アートなのれん」がはためくKUGURU展というアートイベントが開催中です[ 第5回KUGURU展|2026年 3月23日(月) から 5月12日(火) まで]。
いたって普通の商店街に見えますが、そこにアートなのれんがはためくだけで、あら不思議!街に一体感と賑わいが生まれ、ただの街歩きがアート鑑賞に大変身。「次は、どんなのれんがあるのかな?」と宝探し気分も味わえます。のれんを見て楽しむアート鑑賞だけでなく、のれんをくぐってお店との出会いを楽しむアートイベントなども開催されています。






今回はこちらのKUGURU展を手がけるアートディレクター、株式会社エーアンドエムの藤田あかねさんにお話を伺いました。

KUGURU展はどうやって生まれたの?
ライターyoppy早速ですが、このKUGURU展、どういったきっかけで生まれたのでしょうか?
私、これとは別にエドロック・カワミューというアートイベントを2018年くらいから開催しているんです。アートと音楽を家族で楽しめるイベントなんですが、それを見た当時の市長が「これ面白いね」って言ってくれて、文化振興課の方々と市川市を盛り上げる別のイベントを一緒に企画することになったんです。


是非是非!と二つ返事でOKしたんですが、企画中にちょうどコロナがきてしまって。急に密にならないアートイベントを企画しなきゃいけなくなったんですよね。アートイベントなのに密にならないって意味わかんない!と当時は思いましたけど(笑)
会社のみんなで「中じゃなくて外でやれるアートイベント」の色んなアイディアを出し合う中で、海外ではお店のドアや窓をアート作品にするといった手法が当時出てきていて。しかし外装を変えるのは嫌だというお店もあるし、そもそも工事が必要でお金もかかりますよね。そんな時に「のれん」という日本独自の文化に目が留まりました。
『のれんなら、すぐかけられるし、外せるし、来年も使えるし!!』
と、トントン拍子に企画が進みました。当時はギャラリーや美術館すら行けなかったじゃないですか。なので通りを歩いているだけで、そのままアートを楽しめたらいいよねって。







コロナをきっかけに生まれたイベントだったんですね!でも、だからこその逆転の発想がスゴい!



これだけのお店を巻き込むのは大変だったと思うのですが、最初はどうやって開拓されたんですか?
最初の年は、商店街の店舗を全店舗まわりましたね。その時にサイズや間口、どんなのれんだったらかけられるかなどもヒアリングしました。お店の人と話した上で「こういう人だったら、こういうアーティストがいいかも」と、相性が良いアーティストの方向性を検討しながら、1件ずつのれんのデザインをマッチングしていきました。
KUGURU展に参加しているアーティストたちは、どんな人?



のれんを描くアーティストの方達は、どうやって見つけたんですか?
公募で募集をかけました。コンセプトは「あなたが真間を語るなら」。一応サイズとかがあるので、あなたののれんがかかるのはこのお店ですというのは事前に伝えて、でもお店には近づかないでコンセプトに沿ったアートにしてくださいって頼んだんですが、やっぱり寄せちゃう人もいましたね笑。





どうしてお店に寄せないようにしたかったのですか?
お店に紐付けちゃうとアーティストの個性を潰す可能性もあるじゃないですか。こののれんはデザインじゃなくて、一応アートだから。それに「真間を知ってもらいたい」っていう気持ちもあります。あとは継続して開催していく中で、お店とのれんを一部シャッフルすることも出来たので、それは結果的にすごく良かったですね。



何系のアーティストさんが多いんですか?
最終的にのれんになるので、Illustratorが扱えるグラフィック系の人が多いですかね。たまに「自分でイラストを描いたんだけど、どうやってデータにしたらいいの?」っていう感じの人も来ますが、そういう時はデータの作り方から教えてあげることもあります。
どんどん広がる仲間の輪



今年が第5回ということですが、この規模のイベントを継続開催するのは大変ですよね。仲間はどうやって募ったんですか?
発足当初は行政と一緒に進めていたイベント企画ですが、途中で市長が交代し予算がなくなってしまい、正直続けるか迷いました。でも「これから盛り上がりそうなのに、今辞めたらもったいない!」と商店街の人たちも言ってくれて、じゃあみんなで協力しながら続けよう!となりました。
とはいえ人手は足りないので、ボランティアの運営メンバーを集め始めて、一人、また一人と仲間が増えていった感じですね。ホームページやinstagramに情報をあげたり、自分で声をかけたり、紹介してもらったりと色んなことをやりました。
大事な地域活動を、誰か一人の情熱だけに任せない。
人を募る中で最近Mさんという男性が運営に入ってくれたんですが、実は元々大手銀行に勤めてた方で、資金繰りとか収支表とかがカンペキで!もう逆におんぶに抱っこ状態です笑。彼は自身でも地元で同じような周遊イベントを企画していて、お店を巡ってもらうきっかけとして「のれん」っていいじゃん!と着想したらしいんです。そこで情報収集をするうちにKUGURU展を見つけて、ノウハウを学ぶなら中で一緒に動いたほうが早いだろうって仲間になってくれたんですよね。



すごい!どんどん頼もしい仲間が増えていきますね。それに話を聞いていると、別の地域への横展開の可能性もありそうです!
そうそう、同じような仕組みで全国に展開できたらっていう話もしてるんです。彼が言うには、地域活動って続けていかなきゃいけないものなのに、誰かの情熱だけにかかってしまったら続かない。疲弊して終わっちゃうから、そうならないような仕組みが必要なんじゃないかって。
そういう仕組みがこのKUGURU展で作れたら、今後他の地域でもやれるし、どんどん広がっていくはずなんです。なので今はその『持続可能な仕組みづくり』を頑張ってみんなで構築しています。こういう地域おこし系って行政から予算が出てることが多いんですが、そういうものに頼っているとプチッと切られた時に何もできなくなっちゃう。だからやっぱり自走できるように最初から考えないといけないし、資本を生むことを考えないと、と思います。


その一環として、アーティストのグッズ販売は楽しそうだなって。実は以前、KUGURU展に飾られていたのれんが欲しいと言われたことがあり、同じデザインを販売したことがあるんです。その売り上げの一部はアーティストに還元したんですけど、それってすごい素敵なことだなって。
ネットショップとかで、KUGURU展ののれんはもちろん、参加アーティストたちのアートが気軽に購入出来たらいいですよね。
関わっている、みんなが「自分のイベント」と思えるように。



運営をしていく上で、他にも大事にしているポイントはありますか?
特に今年からは、関わってくださっている店舗の方たちがもっと「自分のイベント」と思ってもらえるようになるといいなと思って活動しています。私たちがやっているのは、あくまで『のれんを飾る』ところまで。そこから先はお店の方の力が必要なんだなって最近本当に実感してて。






例えばKUGURU展の期間中、お店に特別メニューや特別サービスができるとか、お互いのお店をオススメし合うとか!そうすると、お店の人も当事者意識が高まるし、相乗効果的にKUGURU展も盛り上がってくると思うんですよね。そのきっかけとしてアートマインドコーチングっていう対話型鑑賞法を去年(2025年)から実践してみているんです。
他者を介してアートと自分を見つめ直す「アートマインドコーチング」



初めて聞きました!どのような物ですか?
対話型鑑賞という物自体は1980年代くらいにMoMA(ニューヨーク近代美術館)で生まれた鑑賞方法で、アートを見ながら対話をして理解を深める手法です。でも日本人ってあまりお喋りするのが得意じゃないから、それを日本式にアレンジしたのがアートマインドコーチングという物なんです。
同じ絵画を見ていて、私にはこういう風に見えるのに、別の人が全然違う見方するのを目の当たりにすると、すっごくアハ体験に近いものがあって面白いんですよ。実は去年入ってくださったボランティアの方が、めちゃくちゃレアなこのアートマインドコーチングの資格を持っていて!それで初めてKUGURU展でも、イベントとして挑戦してみました。
実際にのれんを見ながら、どう感じるかをそれぞれ意見交換してもらって、実はその中に実際にそののれんを描いたアーティストが紛れている!なんて仕掛けもしたり。とても盛り上がったんですが、去年はのれんを見て対話してそれで終わっちゃったんですよね。
『あ、そっか。くぐらなきゃいけないんだ。』
とその時思って。
2016年は、のれんをくぐってお店の中へ。
そこで今年はのれんを見るだけじゃなくて、のれんをくぐってのれんについて話しながらお店のサービスまで体験して帰るというイベントを企画してみました。「やりたい人〜!」って応募をかけたら5店舗のお店が手を挙げてくれたので、それぞれの店主やお店が持ってるカラーを大事にしながら、内容を決定しました。
【第5回KUGURU展|連動企画/KUGURU de アートマインドコーチング】
①Wine Cafe Pub Jack 市川展|お酒と会話を楽しむ時間!ドリンクとワンプレートおつまみあり|2500円
②VIN PLATS Feria|昼のワインと〝のれん”の余韻を楽しむ|ワイン・アミューズ・ワインのお話|3200円
③ハートストーン|自分に合うひとつを見つける|パワーストーンセッション・オリジナルストラップ|2800円
④ANNA ANNA|感じて整う素肌の時間|本来の肌と自分の想いに気づく時間|肌のお話・洗顔石鹸|2200円
⑤sueru & YOGA|自分をととのえる時間|お灸体験で心と体を整える|お灸体験・トークセッション|2200円



わ〜!どれも楽しそうです!私はお灸体験、興味あるな〜!
毎年、何かしら新しい取り組みにチャレンジしていてすごいですね。
いえいえ、ずーーっと発展途上国みたいなものなので。グン!とは行かないんですけど、こうやってちょっとずつ、いつも壁に当たってトライ&エラーの繰り返しです。でも最終的にこの取り組みが形になって、もっと広がっていったらいいなと思います。
人と人との間のコミュニケーションが、結局一番難しい。



これまでで、一番大変だったことや辛かったことはありますか?
そうですね、やはり色んな立場の人がいるので、コミュニケーションが難しかったですね。実は過去に1件だけ完成後に「こののれんは嫌だ」って言われたことがあって。その時はアーティストにも申し訳ないし、お店にも申し訳ないしで…。


どちらか一方に寄り添いすぎず、ニュートラルな状態でいることが大事なんだなって学びました。うちは本業として色んなアーティストの作品を公共のスペースに入れる仕事をしているので、慣れているつもりでいたんです。それに誰でもできると思ってたので人に任せていたんですけど、伝え方のちょっとした違いで心のズレが起きることもある。
マニュアル化する部分と、きちんと伝える部分とは分けなきゃいけないんだなって学びました。今回はその時の反省を生かして、のれんをシャッフルした所は全部、私が間に入ってお話をさせてもらいました。



双方の大事にしていることを理解しながら、ズレが起きないように間を繋ぐってとっても大変ですよね。それができるあかねさん、スゴい!
逆に一番嬉しかったことは何ですか?
自分のところののれんが、一番いい。
「こののれんをかけて、お客様が増えた」とか「こののれんがあったから、話が下手くそでもちゃんと喋れるようになった」とか、そういう話を聞くのが一番嬉しいですね。あと面白いのは、「自分のとこののれんが、一番うちに合ってる」って、どのお店の人も言うんだって!



それは、マッチングが上手くいっている証拠ですね!
はい!私たちも嬉しいし、そう言ってもらえてきっとアーティストも嬉しいだろうなと思います。
アーティストと街を、もっと近づけたい。
KUGURU展を通して、アーティストがもうちょっと街と関われるようになれたらと思っているんです。のれんって、お店の前にあったり、部屋と部屋を仕切ったり、普段の生活の中に当たり前に存在してるもので。絵画やオブジェなんかのアートピースよりも、もっと敷居が低く暮らしの中に入り込みやすいものだと思うんです。




例えばパリって人の生活の中にアートがあるのが当たり前で、美しく生きていくっていうことに対してものすごく洗練されているよねっていう話を最近してたんですが、KUGURU展を通して真間もそういう風になるといいよね、そのきっかけ作りがしたいと思っているんです。


カワミューは1日だけの特別なお祭りでご褒美系だなって私は思っているんですが、KUGURUはどちらかというと、ひたひたとした豊かさとか日々の楽しみとか、そういうものに近くて。ここのエリアの人たちは普通にアートを楽しめる人がいるな、みたいに思われたら超かっこいいやん!そしてそれが日本全国に広がったらめっちゃ楽しい!って思います。



それ、本当にめちゃくちゃ素敵な未来ですね!


1時間ちょっとのインタビューでしたが、あかねさんの太陽のように明るいお人柄と波瀾万丈なこれまでのお話に引き込まれ、あっという間のひとときでした。毎日の暮らしの中にアートが溶け込む、そんな心豊かな生活をたくさんの人に送ってもらいたい、その想いと情熱がとっても素敵でした!
真間を盛り上げたいと賛同してくれた多くのアーティストの想いがこもったのれんが、この商店街には今も多くはためいています。行ったことがないという人は、一度、くぐってみてはいかがでしょうか?
Information
藤田あかねさんとHAYASHI MARIKOさん(KUGURU展にも参加されているアーティストさんです)の二人展が近々銀座で開催されます!こちらもぜひ♡


「窓」La fenetre
Galerie Lã / Salon de Lã(奥野ビル6階)
2026.6.5 Fri — 6.10 Wed 11:00–19:00
「窓」をテーマにした2人展、はじまります。
築95年、銀座・奥野ビルの6階。
歴史を重ねた窓たちに想いを寄せて、HAYASHI MARIKOとAKANE FUJITAが時間、記憶、風景を描きました。
会期中は、アートと音と食が交わるイベントも予定しています。
オープニングパーティー、フルートとコントラバスのライブ、アフタヌーンコーヒー。








